“幸福感”に満たされた心を“いつも持てれば”、それは、どんなに素晴らしいことでしょう!
でも、私たちが生きるこの世界は、全てに限りがあります。
さらに、その限られた中で、多様の価値観がぶつかり合っています。
わが身を振り返ってみても、自分とその周りの社会は、小さな世界であるはずなのですが、そのバランスをとることは、とても難しくなっていて、多くの人が、疲労感や悲壮感を持ちやすくなっています。
幸福感に関し、ドイツにおける幸福研究の第一人者、ヘルベルト・アスツィオ氏の子女、ソニアさんがある記事で説明していらっしゃるのを見ました。
ソニアさん曰く、幸福感を得やすくなるためには、仕事、家族、友人・恋人に至るまで、あらゆる人間関係の中で、私たちが縛られている“こうあるべき”という思いをまず自分が捨てるべきだとおっしゃっています。
そして、自分の幸せを求めるよりも、他の誰かを幸せにするように考えて行動した時に始めて、その関係性の中で信頼が生まれ、これが、自分を幸せにしてくれるのだと、実感できると解説しています。
また、注意すべき点として、人間は、幸福感の増大に貪欲で、「もっともっと」と追い続けてしまい、これでいいと満足することを忘れてしまうのが欠点であることも指摘しています。心が日々、満足によって平和で安定していることが、幸福感を長続きさせる秘訣ということですね。
【心の取り扱い方のいろいろ…】
受容、満足、奉仕、喜び、信頼…等の重要性に関して、私達は、いつもヨーガを通して考えてきました。そして、ここでもう一度、ヨーガの聖典をあらためて見直してみようと思います。
ヨーガの聖典といえば、やはり「ヨーガ スートラ」ですね。ご承知のように、インドは、日本とは比較にならないほど厳しい環境です。そのインドで育まれたヨーガの基となっている聖典「ヨーガ スートラ」には、実践的で有効的な、“心を落ち着けるためのアプローチ法”がたくさんあります。
今回は、その中からまず一つ、有名なこの一節をご紹介します。
『ヨーガスートラ 第一章33項』
「友情(マイトリー)」、「慈悲(カルナ)」、「喜び(ムディター)」、そして、「嬉しいこと、悲しみ、善悪のそれぞれに対する無頓着(ウペクシャーナン)」の態度を育むことにより、心は、明晰となる。
様々な激しい変化をもたらす世界の中で、幸福感を得やすい心とは、やはり、“落ち着きをもった明晰”な心です。ヨーガでは、心を“とても素晴らしい力をもった道具”として捉えていますが、しかし、同時に、その道具は、とても繊細であり、物質的な形ではなく、言葉や感情といった思考という無形なもので作られています。
心は、どんどんいろんなことを考えてゆきますが、気になることや否定的なことに関しては、思考が集中しすぎたり、混沌としてしまいます。そして、これらが身体の疲労感につながってしまうのです。
いわゆる、それが、ストレスというものですね。
そのストレスによって、混乱し自信を失いそうになっている心を、まず落ち着けるためには、「幸せに向かうためのキーワード」を心に定着させることが効果的です。
【世界の変化をどのように受け取るか、そのキーワードとは…】
心の取り扱い方の専門書とも言える「ヨーガ スートラ」からご紹介した上記の一節には、重要なキーワードが含まれています。
それは、自分の周りでおこることを、どのように受け入れるか…であり、その指針をスートラは、明快な言葉によって整理しています。
1. 友情 (マイトリー)の気持ち
2. 慈悲(カルナ)の気持ち
3. 喜び、あるいは満足(ムディター)の気持ち
上記3つに関しては、説明の必要もないでしょう。特筆すべきは、やはり最後のキーワード
4. 無頓着(ウペクシャーナン) ですね。
大胆にいえば、“ 受け流すこと ”も、物ごとを受け入れることに繋がるということでしょう。
善良で優しい人ほど、そして、力が入りすぎてしまう人ほど、この点を忘れがちではないでしょうか?受け入れるという態度の一つに、“やり過ごす、受け流す”ことが含まれていることに、ヨーガの聖典の奥深さを感じますね。
このコラムを通じて、ヨーガが、みなさんの素敵な笑顔を自然にプレゼントしてくれる叡智の宝庫であることを、あらためて気づかせて頂きました。
これからも、自然な幸福感を皆さんと共有できる場にしてゆきたいと思います。
ありがとうございました。
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